おときレシピ
今月のおとき
Vol.46「けんちん汁」
「けんちん汁」という料理を耳にしたことがあるでしょう。神奈川県鎌倉市の建長寺の修行僧がつくっていた「建長汁」がなまってけんちん汁となったとも、中国語で「巻繊」や「巻煎」などと書き、ケンチャン・ケンチェンと呼ばれていたものが「けんちん」となったとも言われています。後者は、細かく切った野菜や豆腐を具にした料理だそうです。
食文化が文字情報として記録されるようになったのは、ごく近年になってからです。それ以前は、その地方地方に口伝で伝わっていました。文字がなくても、記録媒体がなくても、愛され、大切にされてきた料理が数多く今に伝わっています。それは即ち、私たちの先祖の体をつくってきた料理です。ご先祖様も食べた、美味しいと思った、子孫にも伝えたいと思った料理。そこにストーリーが肉づけされ、口伝で継承され、文字に残ったものが、今度はわたしたちの体をつくっています。
料理をするとレシピばかりに目がいきがちですが、名前や由来を調べてみると、その後ろに連なるストーリーが想像できてロマンを感じますね。
材料(2人分)
- 大根…30g
- 人参…30g
- ごぼう…20g
- こんにゃく…30g
- しいたけ…1枚
- 木綿豆腐…1/4丁
- ごま油…大さじ1/2
- 昆布出汁…2カップ
- 醤油…大さじ1
- 酒…大さじ1
- 塩…少々
作り方
- 大根、人参はいちょう切りに、ごぼうはささがきに、こんにゃくは短冊に、しいたけは細切りに切りそろえ、ごま油を引いた鍋に入れ中火で炒める。
- 全体がしんなりしてきたら塩を入れ、昆布出汁を入れ、手でちぎりながら木綿豆腐を加える。
- 沸騰直前で弱火にし、10分ほど煮てから醤油、酒を入れる。味見をして塩で味をととのえ、盛り付けをする。
(ワンポイント)
しっかりと油で炒めてから昆布出汁を入れることでコクも食感もぐっと良くなります。
【監修】青江覚峰
一九七七年、東京浅草生。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。
カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。NHKをはじめテレビ、新聞などメディア出演も多数。
(機関紙「ともしび」令和2年9月号より)
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