真宗佛光寺派 本山佛光寺

2023年10月のともしび

常照我

「正倉院紋様(袈裟裂)」「正倉院紋様(袈裟裂)」

 正倉院は奈良時代、仏教を篤く信仰された聖武天皇のために、光明皇后が仏具、染織品を納められたと言われている。当時交易のあったシルクロードに影響された備品が多くあり、正倉院紋様として現在にも使われている。


 小さな子どもたちに人気の「きかんしゃトーマス」。
 その中に「役に立つきかんしゃになる」という言い回しが出てきます。機関車たちは役に立つと認められようと頑張っており、「役に立たなくなったらスクラップにされちゃう!」と怖くなって逃げ出すというお話もありました。
 役に立つかどうかで判断される社会、役に立たないという烙印を押されることに怯える姿。
 あたかも私自身の不安を言い当てられているようで、この言葉に出くわすと痛々しい気持ちになってしまうのでした。
 役に立つ自分でいたい。そうでないと居場所がない。この不安から逃れられない私は、常に仏さまの教えに我が身をたずねています。どんな自分でも生きていける?と。

  (機関紙「ともしび」令和5年10月号 「常照我」より)

 

親鸞聖人のことば

年比念仏して往生をねがうしるしには、もとあしかりしわがこころをもおもいかえして、とも同朋にもねんごろにこころのおわしましあわばこそ、世をいとうしるしにても、そうらわめとこそ、おぼえそうらえ。

『御消息』より(「佛光寺聖典」七六六頁)


【意訳】

 長年の間、念仏して往生を願ってきたしるしとして、先ずこれまでの悪しき自分を自覚して、念仏の朋友として心の底から大切に思う心を互いに持ち合うこと、これこそが本当に仏さまの願いに生き、この世の現実を悲しく思うしるしでもあるはずだと、そう思うばかりではないでしょうか。


 「立場をわきまえていない」 「ものの分別を知らない」
 「出しゃばり過ぎなんだ」
 人に対して、こんな気持ちを多少なりとも抱いた経験は、皆さんにはないでしょうか。実は、私は何度もあります。その都度、つくづく、私は「にわとりと一緒だ」と思い知らされるのです。


つつきの順位
 にわとりは互いにつつき合って優劣を決めるといいます。
 そして順位が決まると、例えば四羽の場合、一位はすべてを、二位は三位と四位を、三位は四位を、決まってつつくのだそうです。その結果、最下位のにわとりは、餌が食べられなかったり、狭い飼育場だとストレスから皆に散々につつかれて死ぬこともあるのだそうです。
 また、集団に新参者が入れば、全員とつつき合って、その者の順位が決まるのだそうです。

とも同朋
 私は、気づけばいつも他人と自分を引き比べていました。
 特に組織の中では、立ち位置が気になり、また、先ず肩書きで人を判断しました。にわとりの「つつきの順位」と同様、他者との力関係や序列のなかで、人の価値を決めていたのです。
 それに対して、念仏者というものは、「先ずこれまでの悪しき自分を自覚して、念仏の朋友として心の底から大切に思う心を互いに持ち合うこと」だという、この内容はずしんと私の胸に響きました。
 今回のお言葉は、京に戻られた聖人が関東の同朋に向けて出されたお手紙の一部です。
 まるで私たちの身に寄り添うようなこの一文は、すべてはひとしく救われる身との確信に立たれた聖人の、優しくも厳しいお諭しの呼び声に聞こえます。

  (機関紙「ともしび」令和5年10月号より)

 

仏教あれこれ

「ポイント」の巻

 世の中、ポイント全盛期。パン屋、花屋に量販店、どこで買い物をしても、レジで聞かれるのは「ポイントカードお持ちですか?」。これはネットショッピングでも同じこと。ポイントを貯めるとランクがアップし、特典がもらえることがあります。
 さて先日、離れた場所に住む友人と旅行に行くことになりました。ホテル予約サイトを見ながら、どこに行く?どこに泊まる?とメッセージでやり取り。
 いい雰囲気の温泉旅館があったので、そこにしよう!と決めた瞬間、友人が「私が予約しておくね!」と。その勢いに押されるようにして礼を言いましたが、ふと気づきました。「私のポイントはどうなっている?」と。よせばいいのに自分のアカウントを調べたら、あと三千円で最高ランクになることが判明。しかも期限は一カ月。
 つまり、一カ月以内に三千円以上宿泊に使えば、夢の最高ランクにアップできるのですが、今回の旅行以外にそんな予定はありません。友人が名乗り出たその予約、私がしたかった。何なら事情を話し、私に予約をさせてもらおうか?思いは巡り、行き着いた先は「ずるいわ!」との思い。
 そこでハタと気づきました。いやいや、私も同じだと。自分がトクをしたいから予約させろとは、ずるいのではなく、もはやひどい!です。たかがポイント、されどポイント、嗚呼お恥ずかしい。

  (機関紙「ともしび」令和5年10月号より)

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