真宗佛光寺派 本山佛光寺

2015年5月のともしび

常照我

「咲くのみならず…」 撮影 谷口 良三氏「咲くのみならず…」 撮影 谷口 良三氏

 

 人生の花を咲かせる、死に花を咲かせる……とあるように、私たちは人生の目的を花咲くことと思いがちです。けれど花咲くだけでただ散ってしまっては、儚い空しさが残るだけです。
 源信僧都は「念仏を業因とし、往生極楽を花の開けとして、その目的は成仏のさとりの実りとなって、人々を救うことだ」と言われました。それは花で終わらず、確かな実りとなる人生観、死によって空しく散ることのない、豊かないのちの行方でした。
 この人生を実り豊かに生きたいと願う者に、本当のいのちの実りをあらしめてくださる教え、それを「おみのり」といいます。
 花を咲かせることばかりに気をとられる私たち。この人生に生まれてよかったと言える、本当のいのちの実りに出遇えているか、僧都からの問いかけです。

  (機関紙「ともしび」平成27年5月号 「常照我」より)

 

仏教あれこれ

「掲示板」の巻

道ゆく人が、ふと立ち止まって見あげているのは、佛光寺の南門横にある大きな掲示板。
 「ひと月待てた/手紙の返事/メールになって/一週間/LINEになって/一時間?/待てなくなってる/せわしないね」(平成二十六年九月)
 毎月書き替えられる「標語」が、思いもよらずネットのツイッタ―上で取り上げられ、注目を集めています。
 さてこの標語、月一回のペースで開催される伝道誌(ともしび)編集委員会に、各編集委員が持ち寄り、言葉の言いまわし、語呂の流れ、表現が適切かどうか等々を見直し、点検されます。
 現在八名で構成される編集委員は、三十代~六十代と幅があり、世代感覚のちがいは否めず、厳しい意見もあれば、時には的はずれな言葉も飛び出し、ああでもない、こうでもない。
 そうした中から生まれてきた言葉を掲示、平行して本誌八頁に「今月の掲示板」として掲載されます。
 世の中のあるゆる出来事にわが身を通し、常に敏感であるように、それでいて世俗の濁流に流されない。
 書き手と読み手が二分されることなく「ああ、そうだった」と、共に足下を確かめさせてもらえるような標語でありたいと思います。

【掲示板のマスコミ取材】
◆平成27年2月15日(日)
 『毎日新聞』(近畿・地方紙)
◆平成27年1月19日(月)
 フジテレビ「めざましアクア」       (関東ローカル)
◆平成27年2月16日
 フジテレビ「スーパーニュース」   (一部関東ローカル)
番組はYOUTUBE[FNNNEWSCH 京都のお寺]で検索してください。

 (機関紙「ともしび」平成27年5月号より)

 

和讃に聞く

「高僧和讃」
極悪深重の衆生は
 他の方便さらになし
 ひとえに弥陀を称してぞ
 浄土にうまるとのべたまう

(『佛光寺聖典』六二〇頁九七首)

【意訳】

 悪業を重ねる罪深い人間にとって、迷いを超えていく道はお念仏しかありません。お念仏を称えることによってのみ、お浄土に生まれることができるのです。このように源信和尚はおっしゃいました。

 最近、インターネットショップをよく利用します。
 業者間の競争が激しいため割安で、なかには朝に注文した商品がその日のうちに届くこともあります。
 あるとき、注文を済ませたあと、こんなメッセージを目にしました。「現在、事情により納期が遅れています」と。
 早速、苦情の電話を入れたのですが、どうにもならないとのこと。「納期を守らないとは、いったいどういうことだ」。怒りがこみ上げてきました。

 事実に気づく
 後日、納期が遅れた事情を知って驚きました。実は配送にかかわる作業員が過労で倒れるという事故が起きていたのです。
 「安く・早く」。私たち一人ひとりの思いが競争を激化させ、労働環境を悪化させたことが、このような事故を引き起こす原因となったのでしょう

 極悪深重の私
 和讃のなかの「極悪深重の衆生」というと「罪を犯した極悪人」と、自分とはまったく関係のない他人ごとのようにとらえてしまいます。
 しかし、自ら気づいていなくとも、社会生活を営む中で深い重い罪を犯してしまっている私。にもかかわらず、善人面している生き方が、極悪深重の姿そのものなのです。
 今回、遅延の理由をたまたま知ったのですが、もし気づいていなければ「悪いのは、約束を破る方だ」と、また気づいても「悪いのは、人員をもっと増やさない業者だ」と。どのように転んでも自分を正当化する私。
 そんな私の身の事実を先徳方は「極悪深重」という厳しい言葉で、すでに指摘してくださっていたのでした。

 (機関紙「ともしび」平成27年5月号より)

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