真宗佛光寺派 本山佛光寺

時事法話

難度海

平成25年3月

 東日本大震災から2年が経った。あの日を境に人々の口にする言葉が180度変わった。無縁社会・孤独死・心の砂漠化といった寂しい言葉が影を潜め、助け合い・仲間・家族の絆など、人と人とのつながりを表わす温かい言葉が飛び交うようになった。その年の暮には1年を表す漢字に絆が 選ばれた。昨年は自殺者数が2万7766人と15年ぶりに3万人を割った。それこそ、人々が絆の大切さを意識するようになったからではないか。一口に絆と言っても、その受け止め方は千差万別だろう。戦前の大家族を経験した世代は足かせと捉え、戦後の核家族社会で育った中年は、「妻自立、子ども独立、おれ孤立」の川柳のように、家族の絆の弱さに戸惑いを隠せないでいる。家庭崩壊の進む社会に生きる若者には、家族から連想する言葉に絆は存在しない。絆とは本来「馬や犬や鷹などの動物をつなぎとめる綱」のことで、短すぎても長すぎても役に立たない。つまり、絆が希薄だと不安に陥り、濃密だと不自由に感じる。人は、他人と適切な距離を保って初めて、人間となる。

平成25年1月

 廃園に追い込まれた旭山動物園を、日本一入場者の多い動物園に復活させた小菅正夫元園長は、行動展示の大切さを指摘する。人間でも監獄に入れば、退屈で苦痛な時を過ごし、生気を失う。行動展示とは動物の自然のままの姿を見せることにある。つまり、檻の中でも自然界と同じように動 物たちが緊張して生きるような工夫を施す。例えば、一日の大半を餌探しに費やすサルには、餌が簡単に手に入らないようにする。すると、生き生きとして行動し始めるという。また、自然界では多様な動物が共存している。そこで、異なった動物を同じ檻の中に入れてやると、互いに警戒して距離を測りながら活動するというのだ。人間といえども緊張感を失えば、飽き足りても満ち足りない人生に終わる。いま30年前に出版された子ども向けの『地獄』がブームになっているという。地獄絵は私たちの内奥に潜む地獄の境界をえぐり出し、罪意識を醸成して緊張感を喚起し、人として歩むべき道を指し示す。緊張感の欠如という現代社会の闇は、宗教の喪失に起因すると言えるだろう。

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