常照我
あそびの「あそ」とは、昔はぼんやりした状態を表すことばだったと教えられた。
ぼんやりとは、こころにゆとりがあり、時に応じて態度を変えられることでもあるという。
車やオートバイでは「ハンドルのあそび」と言われているように、他の機器類も動作にゆとりがないと故障や事故の原因になりかねない。
自身を振り返ると、こうでなければいけない、こうあるべきだと判断して、あそびのないこころが苦悩を招いている。それは常に「わたしは正しい」というこころに縛られているからだと教えられる。
親鸞聖人は、そんなわたしを仏や菩薩が救うために、それぞれの状況に応じて、ふさわしいはたらきかけをされていることを「正信偈」に「遊煩悩林現神通」という言葉で示されている。
-1024x768.jpeg)
写真佛光寺インスタグラムより
親鸞聖人のことば
一切悪行は邪見なり。
『教行信証』「化身土巻」より
(『佛光寺聖典』 三六四頁 )
【意訳】
あらゆる悪行の根本は邪見である。
邪見とは、物事の正しい道理をわきまえず、自分の都合で物事を判断する自己中心的な心のあり方のことである。
我が家は女三人・男一人の四人家族。少数派の私は、しばしば肩身が狭い思いをしています。
汚れは誰のせい?
ある日のこと、妻からトイレの使い方についてきついお叱りを受けました。洋式トイレに立って用を足すのは家族で私のみ。「あなたのせいで汚れているから終わった後は必ず拭き上げるように!特に便座の裏!」とのお達しでした。
叱責を受けたその日から、粛々と掃除に励みます。汚さないようにと、立ってするのをやめることにしました。
幾日か過ぎトイレ掃除をしていた時のこと。ふと便座の裏を見ると汚れているではありませんか。家族全員が座ってしていたにも関わらず、便座の裏は汚れていたのです。
真実を発見しムッとしたものの、争いの種になるのは明らかですので、そっと胸の内に納めることにしました。
邪見とは
人は自分の都合のいいように物事を判断してしまうものです。一度「あの人のせいで…」と思ってしまえば、その先も、根拠もなく誰かを悪者にしてしまうこともあります。
邪見とは、単なる悪い考えではなく、「私が正しい」という立場に立ったときに事実を誤って見てしまう愚かさです。邪見によって自分や他人を苦しめてしまうので「すべての悪の根源」と言われるのです。
さて、妻の怒りは「夫のせいで」という思い込みが発端でした。まさに邪見そのものでしょう。しかし、それをずっと根に持って、ともしびに寄稿までしている私こそ、「私が正しい」という思いにとらわれた邪見の生き方なのかもしれません。
仏教あれこれ
「体の声に耳を澄ませる」の巻
自分は痩せの大食いだと思っていましたが、四十五歳頃から体重が次第に増えはじめました。また、その頃にタバコをやめたので、口寂しくなり頻繁に間食していたのも、体重増の要因だったと思います。
やがて検診で引っかかり、再検査で、「糖尿病です」と言われました。血糖値が平均よりかなり高いとエビデンスを示され、保健師の方から指導を受けました。
それからは一念発起、ご飯の量をかなり減らし、間食も止め節制に努めました。辛かったですが、やがてウエストサイズも元に戻ってきました。
努力が実り、次の健診では血糖値は平均枠に収まっていました。褒めてくださる医師に、「先生、糖尿病は治りましたね」と勇んで聞くと、「治っていません」とすげなく言われ、「糖尿病は一生付き合う病ですよ」と諄々とさとされました。
治らないの返答には本当に落胆しました。でも不思議にどこかほっとした気持ちもありました。ああ、もうこれで極端な無理を続けなくてもいいと思ったからです。
さて、あれから十年。今は、やや高めの数値での上下幅に一喜一憂しています。自分の体を自分の思いで、意のままにできるという過信はもう抱いていません。反対に、最近は何にせよ、我が身との対話が増えた気がします。食欲のままに食べ過ぎず、でも節制も無理はせずに、体と話す。
「一病息災」とは、頭ではなくて体の声に耳を澄ませることなのだと思うこの頃です。
おときレシピ Vol.107「冬瓜の梅炊き」

今回のお料理は「冬瓜の梅炊き」です。
ご飯のお供としてだけでなく、調味料としても優秀な梅干し。肉や魚を使わないため味のパンチに欠ける精進料理でも、酸味や香りが料理の味を引き締めてくれます。
その際立つ味わいを昆布出汁で調えながら冬瓜と合わせ、さっぱりと上品な味に仕上げるのが今回のお料理。冬瓜の皮の薄緑色の部分を残すように剥くのがポイントです。天候や気分次第で、温めても、冷やしても美味しく召し上がれます。
いざというとき、地域の避難所のような役割を担ってきたお寺では、昔から保存食として梅干しを作っていたところが少なくありません。夏が旬でありながら冬の瓜と呼ぶほど強い冬瓜と一緒に食べると、残暑を乗り切る元気がもらえそうです。
(ワンポイント)
冬瓜の皮に重曹と塩を擦り込む時、白い身の方につけないように気をつけてください。身が崩れやすくなってしまいます。
Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit. Ut elit tellus, luctus nec ullamcorper mattis, pulvinar dapibus leo.
Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit. Ut elit tellus, luctus nec ullamcorper mattis, pulvinar dapibus leo.

【監修】青江覚峰
一九七七年、東京浅草生。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。
カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。NHKをはじめテレビ、新聞などメディア出演も多数。
