2026年9月のともしび

常照我

 二十一年前、JR福知山線に乗車し、事故に遭遇した方のお話を拝聴した。
 閉じ込められた車両内の状況。死傷者の家族や関係者、救出した方々にも、未だ大きな苦悩が続いていることを知らされた。
 翌日、事故現場に行く機会を得た。大きな屋根に包まれたその場所には、様々な爪痕が残されていた。
 事故を起こした運転士は、運転ミスから生じた遅れを取り戻すために安全を怠ったらしい。
 失敗は誰にでもある。それでも安全を第一に判断するより、自己保身を優先させた。その原因は、運転士だけではなく企業や社会にもあった。人は様々な条件に振り回され、思いもよらぬ結果を招く姿に気づけない。
 この事故のお話は、そんなわたしを照らす教えでもあったことに気づかされた

お茶所を彩る百日紅(さるすべり)
写真佛光寺インスタグラムより

親鸞聖人のことば

遇たま行信を獲ば、
遠く宿縁を慶べ
 
『教行信証』「総序」より(『佛光寺聖典』一七五頁)
 
【意訳】
教えは数多くあるけれども、心の底にまで届く教えはいつでも、どこでも聞けるものではないのです。もしそのような教えに出遇えたのならば、その背景には深いご縁があることを忘れてはいけません。

 阿弥陀さまは、お念仏によって私たち衆生に真の心を伝えてくださっています。
 
同じ道での発見
 私は気分転換で時々、散歩をするのですが、信号待ちでキョロキョロしていると「おや、こんなところに花が咲いている」と気がつく時があります。
 しかし、考えてみると花は咲く前から、すでにそこで生きていたのです。
種が根付いて、太陽の光や水に恵まれて、ようやく花が咲くのです。そのことを知っているはずなのに、ついつい種が発芽したことや根を張ってきた営みを忘れて、花が咲いていることのみに目を向けてしまいます。
 
称える姿を見
 私は、学生時代、親鸞聖人のお言葉の中において、お念仏がたいへん大切であると教えていただきました。
 では、いつからお念仏を称え始めたのか?と思い返してみると覚えていないものです。
 それなのにどうして称えているのか。よくよく考えてみると、自分自身とご縁のある人の称える姿を見てきたからだと思います。
 つまり、おじいちゃんやおばあちゃん、おとうさん、おかあさんが称えていた背中を見てきたから自然と称え始めたんだと感じています。
 この人たちの姿を見ることなく、私に突然「今日から念仏を称えよう」という心は発(お)(お)こらなかったと思います。
 ですから、お念仏が称えられるとは、阿弥陀さまのお心の種があらゆるご縁を介して私に届けられた証だと気づかされました。
 普段称えているお念仏は、決して当たり前ではなく、見えない背景があるのだと眼を開かせていただきました。

仏教あれこれ

「勘違いで…」の巻
 
 昨年の九月、家族四人で長崎へ旅行に行きました。子どもたちは初めての九州、初めての新幹線にワクワク。
 乗り換えの博多駅に着いた時、事件は起きました。ベビーカーを押していたので有人改札に向かい、若い男性の駅員さんに切符を渡すと「お一人分乗車券が足りませんよ」と言われたのです。
 次の電車の出発まで十数分。焦って鞄やポケットの中を隅々まで探します。
 冷や汗をかきながら五分ほど探していると、先輩であろう駅員さんが様子を見に来られ切符を確認されました。すると「未就学児の方は乗車券が必要ありませんから、切符の枚数はあってますよ」と一言。つまり向こうの勘違いだったのです。
 次の瞬間、若い駅員さんから「はいどうぞ。行ってください」との言葉とともに切符を返されました。「…え?謝罪の言葉はないの?」という思いが真っ先に脳裏をよぎりましたが、時間もなかったため、キッとひとにらみして乗り継ぎを急ぎました。
 無事に長崎行の電車に乗り継いだ後も、私と妻は駅員さんの対応についてずっとブツクサ。
 するとそこへ、自分の席を探す外国人マダムがやって来ました。席にはすでに他の乗客が。「ここは私の席だ!」と英語でまくし立てますが、残念ながらこの車両は自由席。しばらくして勘違いに気づくと、そそくさと移動して行かれました。
 その光景に思わずクスッとし、先ほどまでの怒りはどこへやら。短い間に腹を立てたり笑ったり、心はままならないものですね。

おときレシピ Vol.106「しいたけとほうれん草のジャーマンポテト風」

 しいたけを使うとき、軸はつい余らせてしまいがちです。私も以前は使い所に悩んでおりましたが、今では冷凍保存し、ある程度たまったら薄切りにして油でさっと炒め、醤油で香ばしく味付けをしています。すると、不思議なことにベーコンを思わせるような香りとうま味が生まれます。私はこれを「しいたベーコン」と呼び、炒め物や和え物など、さまざまな料理のアクセントとして楽しんでいます。今回は、そのしいたけベーコンを使い、「しいたけとほうれん草のジャーマンポテト風」をご紹介します。じゃがいもとベーコンで作るジャーマンポテトは小学生の頃の給食を思い出す懐かしい一品ですが、しいたけベーコンで作ると、やさしい味わいの中にも深いうま味が感じられ、負けないおいしさに仕上がります。
余りがちな食材を無駄なく使えるのも魅力です。ぜひ一度、お試しください

新じゃがいも…4個(200g)
しいたけの軸…6本
ほうれん草…2把
サラダ油…小さじ1
醤油…大さじ1/2
サラダ油…大さじ1
塩…ひとつまみ
胡椒…少々
じゃがいもを蒸し器で串がすっと通るまで蒸す(もしくは一つづつラップして串がすっと通るまで電子レンジにかける(ちなみに900ワットで2分半くらいでした))。ほうれん草はよく洗い、3センチ長さに切っておく
しいたけの軸を薄切りにし、フライパンを中火にかけ、サラダ油小さじ1を入れて炒める。火が通ったら醤油を加え、全体を混ぜたら火を止める。
別のフライパンにサラダ油大さじ1を引き、中火にかける。食べやすく切ったじゃがいもを炒め、表面に焦げ目が出てきたらほうれん草と2のしいたけを加える。
ほうれん草がしんなりとしたら塩コショウで味付けし、盛り付ける。

(ワンポイント)
粒マスタードを加えるか、添えていただくとぐっと表情が変わってきます。

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【監修】青江覚峰
 一九七七年、東京浅草生。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。
 カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。NHKをはじめテレビ、新聞などメディア出演も多数。