2026年7月のともしび

常照我

 担架に乗せられた負傷兵が、震える手で子どもの写真を見つめると静かに目を閉じた。
 戦地からの報道を見て、若い頃お参りに伺っていたおばあさんを思い出した。読経後、おばあさんとわたしは戦死したふたりの遺影の前でお斎をいただく。その間、終始無言。しばらくして「今年も夫と兄と話ができました」と、おばあさんが合掌をしてお参りが終わる。
 ある年「あなたにはふたりの声が聞こえるかい」と、遺影を見つめるおばあさんに問われ、首を横に振った。「家族の写真を持ち、戦地に行ったふたりの気持ちを考えるとね」と、おばあさんは涙をこぼした。
 時を経て「ふたりの声」を考えさせられる。その声は、争いを起こす欲がわたしにもあることを知らせてくれる願いでもあったのだと。

灼熱に耐える大甍
(大師堂と宮家お手植えの枝垂れ桜)      
撮影 滋賀県正覚寺住職
杲 恵順さん

親鸞聖人のことば

超日月光この身には
念仏三昧おしえしむ
十方の如来は衆生を
一子のごとく憐念す
 
「浄土和讃」より(『佛光寺聖典』 五九八頁 )
 
【意訳】
超日月光(阿弥陀如来)は、この私(勢至菩薩)に他力の本願念仏を教えられました。
あらゆる如来方のお徳を具え、苦悩する衆生を我がひとり子として憐み、念じておられるのです。

 ずいぶん昔、あるご門徒から、しばらく月参りをお休みにしてほしいと連絡がありました。その年配の女性は、日ごろからお仏事を大切にされていた方でした。
 
** そばにいたい**
 
 久しぶりにお参りに伺うと、息子さんが突然体調を崩して入院していたこと、救急車の車内でもう危ないかもしれないと言われたことなどをお話しくださいました。
 実は息子さんは生まれつき小児性まひで体の自由がきかず寝たきりで、てんかん発作も患っておられるのです。ですから入院の際は、二十四時間体制で看護してくれる病院を勧められますが、いつもそれをお断りされ、お母さんがずっと横で付き添われているとのことでした。
 「若い頃から何回か同じようなことがありました。でも年齢的に今回は堪えました」とやつれた顔でおっしゃいました。
「でもね。不思議なもので、息子が年を重ねれば重ねるほど、どんどんいとおしくなり、ずっとそばにいたいという思いが強くなっていくんです」と続けられました。
 
 包まれているいのち
 
 その言葉を聞いて、息子さんのいのちの全てがお母さんに包まれているなと感じました。
 しかし、残念ながら人間のいのちには限界があります。ずっとそばにいたいと思っても、それは叶いません。このお母さんの姿から、なぜ阿弥陀さまは無量寿のいのちを持たれたのかを教えられました。
「いつでも、どこでも、ずっとあなたと一緒にいるから安心してよ」。私の称えるお念仏の声に、私のいのち全体を包み込んでくださる親さまのお慈悲のよび声が聞こえてきます。

仏教あれこれ

「ういたティッシュ箱」の巻
 
 私が大学生だったころの話です。学科の棟内には学習部屋があり、一人ひとりに専用の机が与えられていました。
 あるとき、一学年下の後輩の女性が隣の机を使うことになりました。そのころ私には、学科の中に親しい友人があまりいませんでした。隣の後輩と仲良くなりたいと思っていたのですが、話しかけてもどこかよそよそしい感じがして、少し居心地の悪さを感じていました。
 それがあるときから、うって変わって笑顔で話しかけてくれるようになったのです。
後から聞いた話ですが、はじめのうち、後輩は私のことを、真面目そうでなんとなく近づきがたい人だと感じていたそうです。ところがある日、私がいないときに学習部屋にやってきた彼女は、私の机を見て吹き出しました。
 机の上には、くずれそうなほどに物が積み重なってあふれていて、置き場所のなかったティッシュ箱が、ペン立てにささった数本のペンに支えられて、不安定にその上に乗っていました。
「ティッシュ箱がういてたんですよー!」後輩はおなかを抱えて笑いながら、そう話してくれました。私としては「そんなにおかしいかな?」と思ったのですが、よほど印象的な散らかりようだったのでしょう。
 その出来事をきっかけに、私は彼女にとって「近づきがたい人」から「なんだか親しみやすい人」に変わったようです。
 自分をよく見せようとして取り繕うことの多い私ですが、だめなところが見えたほうが、かえって人と親しくなれることもあるのだなあと思った出来事でした。

おときレシピ Vol.104「うどんのピリ辛冷やしトマトだれ

 暑い日が増えてきました。今年の夏も猛暑が続くのかと、気が滅入ってしまいますね。家の中にいても、エアコンをつけていても、体に蓄積された疲労は徐々に気力体力を奪うので注意が必要です。
 そんなとき、何もする気が起きないからとダラダラしてばかりいるのは逆効果なこともあります。元気な体は食事が基本。台所に立ち、鍋を火にかける。野菜を洗って刻む。味を整える。それだけのことでも、活力が湧き、生活のリズムを取り戻すことができます。
 今回ご紹介する冷製おうどんは、さっと出来て、喉越し良く食欲も刺激する一品です。しっかりと体の調子を整えて、夏本番に備えましょう!

うどん(乾麺)…200g
トマト…1個
オクラ…2本
【 A 】
醤油…小さじ1
酢…大さじ1
豆板醤…小さじ1
ごま油…大さじ2
トマトは1㎝角に切り、オクラは茹でて小口切りにする。
Aのたれはボウルであわせ、よく混ぜる。
茹でたうどんを冷やし、1と2をすべて合わせ器に盛る。

(ワンポイント)
辛さが苦手な方は豆板醬を減らして調整してください。

Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit. Ut elit tellus, luctus nec ullamcorper mattis, pulvinar dapibus leo.

Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit. Ut elit tellus, luctus nec ullamcorper mattis, pulvinar dapibus leo.

【監修】青江覚峰
 一九七七年、東京浅草生。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。
 カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。NHKをはじめテレビ、新聞などメディア出演も多数。