常照我
「無量寿」の「寿(じゅ)」は、いただいてきたいのちに気づかせる言葉であると教えられている。
熊本地震から十年の時を経た。ある復興工事の完成セレモニーで「寿(ことぶき)」と「祝(いわい)」という文字が記された数々の品を目にした。ここは、震災による全壊地区だ。住民の願いは元通りの町への再建だったが叶わなかった。町を走る県道は二車線から四車線に、緊急車両が入れなかった道は拡張され、交通の便利さと災害時の安全が得られた。
しかし、高齢者が四車線を渡るには時間と体力を要する。また、せまい道は広がったが、人々が毎日立ち話をしていた路地は失われた。復興への時間と費用ばかり話題になるが、セレモニーで見た「寿」の文字が、ここに生きる人の「いのち」はどうなっているのかと、私を立ち止まらせる。
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撮影 滋賀県正覚寺住職 杲 恵順さん
親鸞聖人のことば
かようのあきびと、猟師 、さまざまのものは、
みな、いし、かわら、つぶてのごとくなる、われらなり。
『唯信鈔文意』より
(『佛光寺聖典』五六〇頁)
【意訳】
これらの売り買いする商人や生きものを殺す猟師などをはじめとして
人は皆すべて、喩えれば石や瓦や小石のような存在です、
それが私たちなのです。
普段、外食店では、あいさつをせずに食べています。
でもこの前、思わず「いただきます」「ごちそうさま」と、手を合わせました。
ミートセンター見学
それは先日、牛の解体処理を行うミートセンター(と畜場)を訪れたからです。そこでの経験は、スーパー等で買うパック詰づめされた食べものの成り立ちを深く考えさせるものでした。職員の方から説明を受けて、最後に「冷蔵庫」に入りました。
吊された何頭もの枝えだ肉にくを見せていただきました。枝肉とは、処理された牛を背骨にそって二つに割った肉のことです。生きものを食べものとしていただいていることを、あらためて強く実感しました。
「われらなり」と「いただきます」「ごちそうさま」は、食材となった動植物の命や、食事に関わったすべての人々への感謝の気持ちを表すものと教えられ、私も大切な言葉と思っています。でもいつのまにかすぐに、形だけのお定りの言葉になってしまいます。
今回の見学で、作業内容や処理された枝肉、そして、職員の方々の思いを知ることで、私の命をつなぐために、他の生きものの命をいただいているという事実を再認識させられました。あわせて、食材をつくる方々への感謝の思いが自然と湧わきあがってきました。
私は、当たり前のことをすぐに忘れてしまいます。ですから、このように、その事実と感謝の念を思い出させてもらえたのは得がたい経験でした。
聖人は「われらなり」という言葉を使われています。日々、他の命をいただくことで生きているのが私たちなのです。
仏教あれこれ
「トンネルを抜けると」の巻
高二の冬休みのことでした。翌年の大学受験の下見のためにひとり上京しました。まだ新幹線のない時代です。大雪でかなり遅れてきた夜行列車に乗り込むと、冷えきった体が強い暖房でぽかぽか暖められ、いつしか熟睡していました。
ふと目覚めるとトンネルを抜けたところだったのでしょうか、朝日が窓から射し込んできて、真っ青な空に驚かされます。灰色の雲に覆われた雪国とは大違い。東京の青空に、不
公平感を強く感じました。
上野から電車を乗り換えると、途中の駅のホームで小学生の一団が制服の半ズボン姿で歩いているのが見えて、目をぱちくり。カルチャーショックです。地図を片手に大学の下見に行くと、自由な格好で歩き回っている学生たちの姿にわくわくがつのります。ああ、あこがれの世界。絶対ここにくるぞ。
あれから何十年経つのか。若い頃は表面的にしか見えていなかった故郷が、しだいに変わって立ち現れてきます。冬の雪かきのしんどさは今も昔も変わりませんが、春夏の田を潤
す河川の水は、ひと冬の間に山に積もった雪のお陰だと、みんな知っています。
そして今、緑の絨毯のようなこの美田がどこまでも広がるのは、あたりまえではありません。「実は、新天地求めてやってきた門徒衆が中心になって、氾濫のたびに泥海となる土地を開拓し続けた何百年もの歴史のお陰だよ」と教えてくれた方がいました。それからは風景が一変して、深く迫ってくるようになったのです。
おときレシピ Vol.102「れんこん餅のみぞれあん」

この時期のれんこんは、寒さによってでんぷん質が増し、ホクホクとした食感になります。これが、通年とれるれんこんの旬が寒い時期と言われる理由でもあるのでしょう。一方、夏に収穫されるれんこんはシャキシャキとした触感で、こちらのほうがお好みだという方も、少なくないかも知れません。
さて、冬のれんこんの食感をめいっぱい楽しむのにおすすめなのが、このれんこん餅です。増したでんぷん質が熱や塩と作用し合い、まるでお餅のようなもっちりとした食感に。さらにみぞれ餡をかけると、油の香りとだいこんの風味、みぞれ餡の舌触りがマッチして、なんとも美味しい一品になります。ぜひお試しください。
(ワンポイント)
れんこん餅がうまく固まらないときは片栗粉を多めに加えるとよい。
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【監修】青江覚峰
一九七七年、東京浅草生。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。
カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。NHKをはじめテレビ、新聞などメディア出演も多数。
