2025年12月のともしび

常照我

 以前、NHKの「チコちゃんに叱られる」で、なぜ大人になるとあっという間に一年が過ぎるのか、という質問の回があった。チコちゃんの答えは「人生にトキメキがなくなったから」というものだった。トキメキとは新鮮な気持ちのこと。子どもの頃は日々の出来事すべてが新しい。感動の連続だ。だから夏休みやお正月を待ち遠しく感じ、一年を長く感じていたのだ。大人になるとトキメキは減ってしまう。経験を積み、毎日同じことを繰り返すからだろう。一年が矢のように過ぎ去ったと感じてしまうのも当然だ。
 仏法は、今日という日が私の人生において初めての日であり、特別な日であったと気づかせる。日々を空しく過ごす私の心を揺さぶり、トキメキを与えてくれる教えなのである。

イラスト 岡山県真光寺住職 守城尚子さん
(略歴)成安造形大学メディアデザイン領域CG・アニメーションコース卒業。株式会社ピーエーワークスに約三年勤務。退職後に岡山県真光寺住職を継職。現在は、放課後児童クラブ支援員、イラストレーターを兼業。

親鸞聖人のことば

煩悩、眼を障えて
見たてまつらずと雖も、
大悲倦きこと無くして
常に我を照らしたまえりと。
 
正信偈』より
(『佛光寺聖典』 二二九頁)
 
【意訳】
 煩悩がわたしの眼をさえぎって、
気がつくことができないのですが、
阿弥陀如来の大いなる慈悲の光明は、
そのようなわたしを見捨てること
無く常にはたらいていてくださるのです。

五年間続いた本山での年二回の研修が終わりました。
先生は「この仲間でこれから毎年、各地の寺で法話会をして行こう。
共通のテーマを考えなさい」とおっしゃいました。
 
 生活の中の仏教?
 春と夏の一週間ずつ、先生に教えを学び、
ともに同じ釜の飯を食べた仲間たち。長い研修が終わることにほっとしています。
 これまでの学びを生かしていこうと様々な意見が出ました。
「ご門徒さんの興味を引くテーマがいいのでは?」
「難しい仏教用語でなくわかりやすいことばがいい」
「身近で使われている仏教のことばや行事があるから、生活の中の仏教というテーマはどうかな」
などという意見が出ました。
 その時「逆や」という先生の声が響きました。「仏法の中の生活。お念仏の中の生活や」
 お念仏の中の生活?聞いている私たちは「???」。
先生のことばの意味が、実はよく分からなかったのですが、
みんな分かったような顔で頷き、テーマは「お念仏の中の生活」に決まりました。
それから三十年近く、このテーマで順番に仲間の寺で法話会を開いてきました。
最後は先生がお話をされます。その歩みの中で「お念仏の中の生活」の意味が明らかになってきたのです。
 今日、久しぶりに当時のノートを開いてみました。
ああ、最初の講義の日から、はっきりと先生は語っておられます。
 大きなはたらきの中にあるわたしのいのち。本願、他力の中のわたしのいのち。
二年前に亡くなった先生のことばが、きらきら光って見えたのです。目覚めよ、というお念仏の喚び声の中のわたしでした。

仏教あれこれ

「父の悲しさ」の巻
 
先日、久しぶりに長女が帰省した時のことです。
次女と二人、姉妹で映画を観にいく予定について話すのが聞こえてきました。
私も観たいと思っていた映画だったので「一緒に行こか?お昼に美味しいものでも食べて、映画終わってからは買い物でもどう?」と誘いました。私がいれば支払いは全て私持ちだと二人も分かっているはず。
 しかし、どうも二人の反応が芳しくありません。何か言いにくそうです。
敏感に察知した私が「あっ、二人で出かけたいんやったら行っておいで」と言うと、「うん、ごめんね。また今度」と。「いいよ、いいよ……」と何とか答えた悲しさとともに、昔の父の姿を思いだしました。
 当時、九歳の私が誕生日プレゼントにお願いしたのがラジコンカー。上級生がコントローラーを両手に持ち、公園を自由に走らせる姿に憧れていたのです。「よし、分かった」と言った父。仕事帰りに探して買ってきてくれたのは、本体から延びたコードの先に付いたスイッチで前後だけに動く車でした。「違う」と言って泣き出す私を見て、困惑し悲しそうに笑う父の顔。
 私もまた、子に向けられた親の心を踏みつけにしてきたのだと、あらためて気づいた出来事でした。

おときレシピ Vol.99「さつまいものレモン煮

 料理を通して仏教を伝えるということをしているので、料理や食材が、どこで生まれてどうやって今に伝わるものなのかを、一通りは調べるようにしています。ところが、この「さつまいものレモン煮」については、よくわからないのです。
 レモンを使っているということは、和食としての歴史はそれほど古くはないはずです。ところが、いつ、誰が、どんなきっかけで生み出した料理なのか、どうしても探し当てられないのです。
 毎年この時期になると、一度は調べて、でも見つからず、結局「まぁいいか。美味しいから」と落ち着くことの繰り返しです。調べればなんでも答えが出るわけではないんですよね。
 ただ、いつかの時代の誰かが、さつまいもとレモンという、産地も旬も違う食材を合わせて生み出してくれたことは事実です。
良いものは残る。それだけです。見た目の美しさと、程よい甘みと酸味、香り。それが喜ばれて今日も食卓に華を添えてくれる「さつまいものレモン煮」です。

さつまいも(小)…2本(250g)
くちなし(あれば)…1個
レモン果汁…大さじ4
砂糖…大さじ6
水…400ml
さつまいもはよく洗い、皮つきのまま7㎜の輪切りにする。
材料をすべて鍋に入れ中火にかけ、さつまいもに串がすっと通るまで煮て火を止める。
くちなしを取り除き、粗熱がとれたら冷蔵庫で冷やす。

(ワンポイント)
お弁当などに入れるときには水気をよく切って入れると長持ちします。

Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit. Ut elit tellus, luctus nec ullamcorper mattis, pulvinar dapibus leo.

Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit. Ut elit tellus, luctus nec ullamcorper mattis, pulvinar dapibus leo.

【監修】青江覚峰
 一九七七年、東京浅草生。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。
 カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。NHKをはじめテレビ、新聞などメディア出演も多数。