常照我
 「何で勉強せなあかんの」
 真顔で問われました。これは今、この子の切実な問いです。
 昔、私も同じ質問を大人にした時は、「子どもは勉強が仕事」と教えられました。でも、納得はできなかった。また仮に、「勉強が仕事」と言えるなら、それは大人の働く意味も問うているので、なおさら返答に困ります。
 子どもの素朴な質問は時に本質を突きます。学ぶ目的を問う視線の先には、働く目的もあれば、更には人生観や死生観にも繋がる様々な問いがあり、まるで深い森に迷い込むようです。
 私はこの種の問いを真剣に考えるのが苦手です。毎日忙しいし、何よりも面倒だし、それに何か少し怖さもあって。
 でも、私たちの本当の勉強は、自分で問いを見つけることから始まるのかもしれません。
(機関紙「ともしび」令和3年9月号 「常照我」より)

親鸞聖人のことば
智慧の光明はかりなし
有量の諸相ことごとく
光暁かむらぬものはなし
真実明に帰命せよ
『浄土和讃』より(「佛光寺聖典」五八〇頁)
【意訳】
 人間の力では量り知ることができない阿弥陀さまの智慧の光は、自分の都合で物ごとを分け隔てし、その事実に気づいていない私の闇を照らし続けてくださっています。私たちは、阿弥陀さまの智慧をよりどころとせずにはおれないのです。
それぞれの苦
 昨年来、遠出や大勢の人が集まる場を控えることが求められ、コンサートや演劇といった舞台の世界は相当な苦境にあります。私は観る側ですが、複雑な思いが交錯しています。
 舞台の開催自体が減っている中、開催できても客席の収容率は半分以下という制限で、チケットの入手が困難になりました。また、せっかくチケットを入手できたのに、職場や家庭の事情で泣く泣く断念する方も。各人の状況により、行ってもいいのか?という悩みも生まれます。
 オンライン配信がなされることもありますが、「配信なら皆が最前列」という前向きなコメントを見て「確かにそうだけど、生の会場でしか味わえない音の響きを堪能したいのに…」と嘆いたり、「いやいや、全てを断念している人もいる中、観れる機会が皆無ではない自分は十分に幸せではないか」と思ったり。
比べることで苦しむが
 そんな中、ある時オンラインのご法話で聞いた「比べなくてよいことを比べていませんか」というお言葉に、ハッとしました。私がしていることは、「存分にステージを楽しめた過去との比較」「環境や立場が違う人との比較」ばかりではないか。比べなくてよい世界があると知らされることで、比べては思い悩んでいる自分の姿に気づかされました。
 無論、気づいたとて「比べない自分」には、なかなかなれません。でも、そんな自分のままで救われていく道があるのです。「本当は、比べなくていい」という阿弥陀さまの世界は、比べ迷いながらも私が生きていけるよりどころであると、このご和讃はお示しくださっています。
  (機関紙「ともしび」令和3年9月号より)
仏教あれこれ
「オトク」の巻
 数年前のことです。
 仕事で地方都市に行ったところ、1時間ほど時間が空きました。
 そういう時は、美術館などに行くのですが、あいにく近くにはありません。ウインドウショッピングをするような場所もなく、どうしたものかとウロウロしていると、カフェを見つけました。1時間後には仕事があったので、熱くて苦いコーヒーでも飲んで、シャキッとしておこう。私はお店のドアを押しました。
 ハワイをイメージした店内に入り、メニューを見ると、「パンケーキセット千円」の文字と写真が。コーヒーは四百五十円なのに、セットで頼むと、八百五十円のパンケーキが付いて、千円!めちゃくちゃオトクです。おまけに、午前中の二時間限定と書いてあります。よし、これにしよう。そう思って、もう一度メニューをよく見ると、飲み物が選べます。一番安いのがホットコーヒーで、一番高いのが六百五十円のレモネード。どれを選んでも、値段は同じ。よかったぁ、ちゃんとメニューを見て。私は迷わず、レモネードを頼みました。
 千五百円分が、千円で食べられるのです。オトクです。おまけに、運ばれてきたパンケーキも、レモネードも美味しい。でも、何かが違うのです。
 私は、ハタと気づきました。私が飲みたかったのは、熱くて苦いコーヒーだったのに、飲んでいるのは、冷たくて甘いレモネード。
 追加でコーヒーを頼もうか?と思いましたが、ゆっくり飲む時間がなく断念。目先のオトクに踊らされ、本来の目的を見失い、はぁ、何やってんだか。
  (機関紙「ともしび」令和3年9月号より)
おときレシピ Vol.56「ひじきの和え物サラダ」

 暑い時期、火を使って料理をするのは大変です。できるだけ台所に立つ時間を少なくしたいものですね。そんなときにおすすめなのは、常備菜を用意しておくことです。
 多めに作っておけば、食べるときに冷蔵庫から出して器に盛るだけ。アレンジを加えて味に変化をつけることも可能です。
 今回ご紹介するのは、ひじきの和え物をベビーリーフと合わせてサラダ仕立てにしたものです。ひじきといえば煮物で和食の定番と思われがちですが、いつもと違う食材と合わせることで、ガラリと雰囲気が変わります。
 食ベ物としては珍しい真っ黒という色のわりに、味には強い主張がないので、案外様々に応用をきかせられる食材です。
 常備菜として保存するなら、行程5まで行って密閉容器に入れておきましょう。そのままお弁当のおかずにするもよし、ベビーリーフにのせてサラダにするもよし。毎日の食事作りに一役買う一品です。
(ワンポイント)
 常備菜として保存するときは塩分を少し強めにするといいでしょう。
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【監修】青江覚峰
 一九七七年、東京浅草生。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。
 カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。NHKをはじめテレビ、新聞などメディア出演も多数。

 
			