常照我
二年前「父親の九十回忌をお願いします」と依頼してこられたのは、篤信のKさんというおじいさんだった。
ご法事の後、お茶をいただきながらKさんのお話を聞く。小学校にあがって間もなくお父様を亡くされたこと、若くして一家の柱となったことなど。けして平坦ではなかったであろう人生を、明るくお話してくださった。
昨年Kさんは病に倒れ、九十八歳で生涯をとじられた。入院中、枕元に経本を置かれていたKさん。目もほとんど見えなくなっていても、亡くなる間際まで経本に手を添えておられたとのことだ。
九十余年、Kさんの人生の中心は常にお念仏であった。ご自宅のお内仏に向かうたび「住職もお念仏を真ん中にな」とKさんに呼びかけられる思いがする。

(略歴)成安造形大学メディアデザイン領域CG・アニメーションコース卒業。株式会社ピーエーワークスに約三年勤務。退職後に岡山県真光寺住職を継職。現在は、放課後児童クラブ支援員、イラストレーターを兼業。
親鸞聖人のことば
五濁悪時の群生海、
如来如実の言を信ずべし
「正信偈」より(『佛光寺聖典』 二二六頁 )
【意訳】
五濁の悪時に生きる人びとは、釈尊が説かれた阿弥陀仏の本願を信ずるべきです。
先日あるご法話で「五濁の悪い世」というお話がありました。その中で「五濁とは、わたしの身勝手な心のこと」とのお言葉を聞き、考えさせられました。
五濁
五つの濁りとは、劫濁という時代の濁り。見濁という真実を見ることができない濁り。煩悩濁という欲望に支配される濁り。衆生濁という人としての行動ができない濁り。命濁といういのちを軽んじている濁り。これらが時に応じて私の中に生じ、身勝手に行動してしまうのです。
先日赤信号で停車中、車窓から見た光景に驚きました。これから収穫が始まる時季だというのに、田んぼの隅にコンビニ弁当の残骸が山のように捨てられていたのです。それを見て、本当に悪い世の中だと思いました。
わたしは五濁の意味を教えられてはいたものの、周囲で起こるトラブルや報道されている事件、事故を見ながら、悪いことはすべて他人事に感じていました。
私のすがた
そして、ふと先日のお盆参りの時のわたしの姿を思い出しました。
渋滞で予定が狂うと、原因である故障車の運転手に冷たい視線を向けました。ご門徒宅では、読経中に次の予定のことばかり。移動中は車を飛ばし、予定の時間に間に合えば自分を褒める始末です。相手のこと、ましては亡くなられた方のことを考えない、身勝手極まりない姿でした。
五濁の悪世の原因は、実はわたしだったのです。わたしは自身の都合で善し悪しを判断します。親鸞聖人は、阿弥陀仏から見た真実のありさまを五濁と説かれたことにより、真実を知らされることを「如実の言」を信ずべしと教えられたのです。
仏教あれこれ
ノーベル賞が発表される十月を迎えました。日本人の受賞は今回もあるのか楽しみです。
ところで、ノーベル賞の設立者は、スウェーデンのアルフレッド・ノーベル氏です。彼はダイナマイトの発明者であり、爆薬の開発・生産で巨万の富を築いた人だということは、ご存知の方も多いと思います。
その彼が、賞の創設を考えるきっかけになった出来事がありました。
ノーベルの兄が亡くなったときのことでした。フランスのある新聞が誤って、アルフレッド本人と取り違え、彼の死亡記事を掲載したのです。記事は、彼を大量破壊の発明者であり、それを各国の軍に装備させて富を築いた人物だとしていました。見出しは、「死の商人、死す」だったそうです。
彼は生前に自分の死亡記事を読むという特異な機会を持ったのです。そして、自分が死の商人と記憶されることに衝撃を受けた彼は、自分の財産を元手にして人類に恩恵をもたらした功績に対する賞の創設を考えるようになったとのことです。
その平和賞を昨年は、日本原水爆被害者団体協議会が受賞されました。「ノーモア・ヒバクシャ」と長年月に訴え続けてきたこれまでの努力が報われたとの喜びの声が伝わってきました。受賞により、「証言」が世界により広まるに違いありません。素晴らしいことです。
さて今年は、どんな方々が平和賞を受賞されるでしょうか。『仏説無量寿経』に説く「兵戈無用(軍備無用)」の世界に近づくことを心より願います。
おときレシピ Vol.97「舞茸のテリーヌ」

秋になると知人から舞茸が届きます。一株丸ごとの舞茸は見た目も立派ですが、香り、味ともに濃く、歯ごたえもしっかりとしたもので、おひたしにしてよし、天ぷらにしてよし、乾燥舞茸にしてもよしと、毎年楽しく料理しています。
さて、今回は目先を変えて舞茸のテリーヌをご紹介します。具は潔く舞茸のみ。オーブンやグリルで焼いた舞茸特有の香ばしさと、しゃっきりとした食感が際立つ一品です。レシピ通りに作ればあっさりとした味に仕上がりますが、オーブンで焼くところを油炒めにすればぐっとコクのある味わいに。シンプルなだけに、お好みでアレンジを加えるのも楽しいですね。
(ワンポイント)
もっとコクを出したい人はオーブン等で焼く代わりに油で炒めたものを使っても美味しいです。
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【監修】青江覚峰
一九七七年、東京浅草生。浄土真宗東本願寺派緑泉寺住職。
カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。NHKをはじめテレビ、新聞などメディア出演も多数。