真宗佛光寺派 本山佛光寺

2016年9月のともしび

常照我

「蝶と女郎花」 撮影 中山 知子氏「蝶と女郎花」 撮影 中山 知子氏

 保育園の定員問題が騒がれ、女性の就業を支えることが政治の争点ともなっている昨今。「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業は、賛成か反対かの意識調査が行われる程度には、今でも「常識」だ。しかし、調査結果は賛否が約半数ずつ。つまり、ある人が当然とみなしていることと、私が当然と思い込んでいることは、しばしば食い違っているということだ。
 戦前は女性も普通に労働力とみなされていた。農作業に追われ苦労した祖母なら、「女は家庭?まあ、それなら楽だわねえ」と言っただろう。
 人間が作った社会規範は常にゆらぎ、移ろう。同じ時代を生きていても、隣の人と私の常識は異なる。「常識」は固定的ではない。違うこと、変わることを素直に受け止めよう。

  (機関紙「ともしび」平成28年9月号 「常照我」より)

 

仏教あれこれ

「編集会議」の巻

 『ともしび』の編集委員にご縁をいただき、数年になります。漏れ伝え聞いていた噂に違わず、会議は毎回、白熱。なかなかの出来だと思って提出した原稿が、他の編集委員の方たちからのご指摘により、木端微塵(こっぱみじん)になることも度々です。もちろん、指摘により気づかされることも多く、貴重な学びの場をいただいているのも事実です。
 とはいっても、当初は場違いなところに来てしまった…。そんな思いもありました。しかし時が経ち、先輩たちの原稿に対しても、遠慮なく指摘をしている自分がいます。
 それは、多少の自負を含んでいますが、宗派の新聞だという責任を感じているからこそ。そして何より、会議の場が、安心して発言できる場だということです。なぜなら、編集委員は皆、「いい誌面にしたい」との思いで集まっているからです。
 さて、先日の会議でも、カンカンガクガクが始まりました。言い出したのは、他でもない私。それによって、会議は白熱。それぞれの思いから出てくる言葉が、激しく飛び交います。けれども、根っこは同じ教え。その受け止めや、伝え方が違うだけなので、当然のことながらケンカにはなりません。反対に、自分の受け止めが正しいという思いが、私の中にあったのではないかな。議論は大事ですが、教えさえも自分のモノとしてしまい、教えを正義の盾として、自分の思いを伝える手段にしていたのでは?そう気づかせていただく、大事な機会となりました。とは思うのですが…。正直なところ、「やっぱり私が正しかった」との思いも捨てきれない私です。

  (機関紙「ともしび」平成28年9月号より)

 

和讃に聞く

信は願より生ずれば
念仏成仏自然なり
自然はすなはち報土なり
証大涅槃うたがわず

高僧和讃(『佛光寺聖典』六一八頁 八二首)


【意訳】

 信心は、「必ず救う」という本願から顕われた阿弥陀さまからのたまわりものですから、それを受け容れた念仏のひとをおのずから成仏ならしめるのです。その自然なる救いのありようそのものが願いに報いた浄土のはたらきなのです。
 大涅槃を証ること、それは疑いようもありません。


 ご自身のお寺で毎月和讃の話を一首ずつされていた恩師。ある時、話の終わりに珍しく、翌月は順番を飛ばして上の和讃をお話したいと仰った。

一番言いたかったこと
 「親鸞聖人は善導大師のお聖教をここへ集約しておられます。
 信心は自分の心から生まれてくるものじゃない。自分の心で起こせるものでもない。阿弥陀さまの願いから生ずる。阿弥陀さまの願いが、私の上では信心となって顕れてくるということ、それを善導大師は一番言いたかったらしい」
 信心とは「必ず助ける」という阿弥陀さまの願いが私に届くこと。だから信心は本願が生み出していくものであって、私の頭から生まれてきたのではない。阿弥陀さまの願いが顕れていることなのだと。そういうものなのだと師は語られた。

最後の課題
 「ひと月位いっぺんこの一つの和讃を、言い続けてごらんなさい、読み続けてごらんなさい。大分違うよ。話というのはたくさん聞けばいいというもんじゃない、一つでいいんです。
 どの和讃でもよろしい、一つの和讃を、目をつむったらその和讃がパッと出てくるくらいにしてごらん。それくらいになったらね、その和讃があなた方の心の中にはたらいて、信心という花を咲かせてくれる。嘘だと思ったらやってみてごらん。この和讃もそういう和讃ですよ」
 それが師の自分の寺での最後の法話となり、その受け止めはこれからの永い課題となった。
 いま私はこの和讃を繰り返しいただいている。私が仏法を聞ける、それこそ阿弥陀さまの願いがはたらいている証拠なのだ。それを味わいなさいよ、と師の声が聞こえる。

  (機関紙「ともしび」平成28年9月号より)

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